「ないときはない」と「ないときがない」の違い
ふと会話の中で「ないときない」というフレーズが出てきた。
「ないときない」という表現は「ないとき●ない」の●の部分にある助詞が省略された表現であると理解したが、この省略された助詞が"は"なのか"が"なのかで意味が変わるな、と考えた。
- ないときはない:「”ない”というケースでは本当に"ない"のだ」というトートロジー的な意味。
- ないときがない:「"ないとき"というケースはない」つまり「いつも"ある"」という意味。
なぜ"は"と"が"で意味が正反対になってしまうのだろうか、ちょっと考えてみた。
なお、冒頭で取り上げた「ないときない」は語尾が下がる平叙文であり、「ないときない?」のような語尾が上がる疑問文ではない。「ないときない?」は「ないときはありますか?」という単純な質問の意味や、「ないケースがあるよね?」という確認の意味が考えられる。
「●ときは●」は慣用的表現
最初は"は"と"が"の意味の差異から生まれてくるのかと考えたが、最終的には以下の考えに落ち着いた。
- 「●ときは●」というのは「●のときはどんなときでも●」という意味の慣用的表現であり、●には多くの場合動詞が入る。
- 例えば、「死ぬときは死ぬ」は「死ぬときはどんなときでも例外なく死ぬのだ」という意味になるし、「来るときは来る」は「来るときはどんなときでも例外なく来るのだ」という意味になる。
この表現では●に形容詞が入ることもある。「ないときはない」というのは「ないときはどんなときでも例外なくないのだ」という意味になる。
他方で「ないときがない」というのは、述語"ない"に対して、その主語が"ないとき"であるということを、主語を意味する助詞"が"が担っていると理解できる。
- したがって意味としては"ないとき"を"ない"で否定しているので、「ある」という意味になる。
ちなみに「●ときは●」という表現は、●に正反対の述語を入れて「①ときは①だし、②ときは②」という表現で使われることが多い気がする。
- あるときはあるし、ないときはない
- 食べるときは食べるし、食べないときは食べない
- 行くときは行くし、行かないときは行かない
"は"と"が"の違いをもっと知りたい人向け
この件については、最初、以下の本に何か書いてないかなとみてみました。日本語の"は"と"が"の違いについて詳しく知りたい人にはおすすめの一冊です。