大学で4年間勉強したドイツ語を復習する(その2:ドイツ語の母音はウムラオトが肝)


かつてNHK教育で放送されていた「アエイオウ」です。
元々はイタリアの作品だそうで。

早速の第2回はドイツ語の発音です。基本的にドイツ語は、英語やフランス語と比べれば見た目通りローマ字読みすればいいものが多いのですが、それでもやっぱりスペイン語やイタリア語と比べるとローマ字読みにならないものが一定数あります。それでも英語とは違って、ひとつの綴りで色々な読み方があるというようなことはまずない(あるとすれば外来語由来のもの)ので、そこは安心して下さい。英語以外の外来語を学ぶとよくわかりますが、あんなに発音規則がメチャクチャな英語が読めるのですから、それよりもずっと発音規則が安定している他の外国語の発音が覚えられないはずがないです

今回は母音を紹介します。

単母音について

単母音であるa, e, i, o, uは、そのまま「ア」「エ」「イ」「オ」「ウ」と読んで構いません。長音になっても、そのまま伸ばして「アー」「エー」「イー」「オー」「ウー」と読みます。
さて、ドイツ語の母音はこの5つ以外にウムラオトの3つがありましたね。今回はこれらをひとつずつ解説していきます。

ä

これは一番簡単です。異論があるかもしれませんが、とりあえず「eと同じ」と思ってくれて大丈夫です。

ö

この文字の発音は、日本語にはありません。英語にもありません。メジャーな言語だと、後はフランス語で出てくるくらいでしょうか。
この文字の発音(円唇前舌半広母音[œ])は、よく「オの口をしてエと発音する」と教えられたりします。もう少し詳しく言うと、エの口をしてから、唇だけをオを発音するときのように丸める感じです。

ü


ドイツ語には英語のoverに相当する前置詞として
überという単語がありますが、ロックバンドの
UVERworldはこの2単語からUVERという造語を
作ったそうです。

この文字の発音も日本語にはありませんし、英語にもありません。メジャーな言語ですと、フランス語の他に、中国語(普通語=北京語)で出てきます。
この文字の発音(円唇前舌狭母音[y]もしくは円唇前舌め広めの狭母音[ʏ])は、よく「ウの口をしてイと発音する」と教えられたりします。もう少し丁寧に説明すれば、英語のiを発音するように、上の歯と下の歯をカッチリつけて、口を横に大きく広げてイと発音した状態から、ちょっと上の歯と下の歯との間を開けて、唇だけ日本語のユを発音するときのように突き出す、といったところでしょうか。
俗に「ユと同じ」と言われたりすることがあるのですが、これは完全な誤りです。üは母音である一方で、ユ(/ju/)は子音と母音のセットです。この区別は割りと簡単で、その音を伸ばしてみればわかります。ユを伸ばして「ユー」と発音すると、長音の部分は「ウ」になっているはずです。子音と母音が連続して発音されると、このように母音だけしか残りません。一方で、üは母音だけなのですから、伸ばして発音してもずっとその音が続くはずです。アを伸ばして「アー」と発音してもアが続いているように、です。これはよく、日本語にない母音をしっかり発音できているか確認するときに僕が使う方法なので、是非試してみて下さい(と言っても、これは大学1年のときにドイツ語の先生から教わった方法なんですけどね)。
それと、ドイツ語ではYは母音として扱われ、発音はこのüと同じ音になります。Yは外来語でしか出てきませんが、その時は忘れずにüと同じように発音してくださいね。

二重母音

次は二重母音です。こちらも原則はローマ字読みなのですが、やはり例外があります。基本的には3つですが、僕は4つ目を是非加えたいです。

ei


Einstein_tongue / nanciesweb

eiと綴って、発音は「アイ(/ai/)」です。アインシュタイン(Einstein)の名前にはeiの綴りが2つも入っていますね。「家」を意味するheim(英語のhome)は、日本では良く住宅建築会社の名前に「ハイム」という形で入っています。

eu

euと綴って、発音は意外にも「オイ(/oi/)」です。ドイツ語ではユーロ(Euro)は「オイロ」と発音します。ドイツの数学者オイラーの綴りもEulerです。理系の人にしか縁がないかもしれませんが、自然対数の底ネイピア数と呼ばれる超越数eは、オイラーが初めてeと書いたと言われていますが、もしかしたら自分の名前の頭文字を取ったのかもしれません。

ie

ieと綴って、発音は「イー(/i:/)」です。外来語では綴り通り「イエ」と発音されることがあるので、注意して下さい(例:Familie「家族」)。

au

あまりauを二重母音の例外として扱う人はいないのですが、この発音は「アウ」というよりも「アオ」に近いと思うので、ここに4つ目の例外として加えます。前の記事で一般に「ウムラウト」と呼ばれるものを敢えて「ウムラオト」と書いているのはそのためです。発音記号では/aʊ/と書くので、厳密には「アウ」と「アオ」の間と言ったほうがいいのかもしれません。

音の長短

最後に、ドイツ語の発音の長短について説明します。ドイツ語では規則的に長短が決められるので、最初はその規則に従って発音すると良いでしょう。次第にドイツ語の音に慣れてくると、そんなこと考えなくても正しく長短を発音することが出来ます。これは他の言語でも同じですね。
ドイツ語のアクセント(ストレス)は、原則第1音節目で、そこを強く発音します。この音節が母音で終わっていれば、この母音は長音になり、この音節が子音で終わっていれば、この母音は単音になります。もう少し簡単に説明するために見た目重視で言い換えれば、

  • その単語の最初の母音を強く発音する
  • その母音の後ろに子音が1つだけなら、その母音を伸ばし
  • その母音の後ろに子音が2つ以上あるなら、その母音は伸ばしません

ということです。いくつか例を見てみましょうか:


muji_baumkuchen_ring_cafe_au_lait_4 /
perry_marco

  • Guten Tag: グーテンターク(英語のHelloに相当。直訳するとGood dayとなりますが、豪州英語でしかこの表現は使いません。)
  • Danke: ダンケ(英語のthankです。「ありがとう」と一言でいうときに使いますね。)
  • Baumkuchen: バオムクーヘン(「バウムクーヘン」です。この単語は「木」を意味するBaumと「ケーキ」を意味するKuchenがくっついているので、それぞれの最初の母音にアクセントがあります。また、次回詳しく説明しますが、chはこれで1つの子音なので、その直前のuは長音になります。)