なぜoneと綴って/wʌ́n/と発音するのか?(中学生の英語なぜなぜシリーズ その1)

なぜoneと綴って/wʌ́n/と発音するのか?

英語を学習すると、いや、英語学習を始める前から、ありふれた英単語として接しているため、改めてこのことを疑問に思う人はそんなにいないかもしれない。
しかし、英語学習を進めていき、単語の綴りと発音の関係がおぼろげに掴めてきた時、改めて考えると不思議な発音である。


寺澤の英語語源辞典(研究社)によると、

ME ōnは南西部や西部では15Cまでにwōn, (強勢のないときは)wonのように語頭に半子音wが添加され, wunを経て, ModE /wʌ́n/となり, これが標準化した.
なお, 強勢形の母音はのちに二重母音化するが, それはalone, atone, onlyなどの中に残る.

とのことであり、まとめると、

  • 中英語の時点ではōnであり、カタカナで書くなら「オーン」と発音した。
  • イギリス南西部や西部では、15世紀までに語頭にwが添加され「ウォーン」と発音し、更に、強調して発音されない時は「ウォン」と発音された。
  • 更にこれがwun(発音は「ウン」)となったタイミングで、大母音推移により発音が「ワン」になった。

上記には書いていないが、恐らく一方で、単語の綴り自体はōnの時代を踏襲し、oneの形になったのであろう。
oneと綴って「オウン」と読まないのは、この単語が短いため、そして比較的頻用される単語であるため、強く発音されることが少なく、それ故aloneやonlyなどとは別の発音の進化を遂げることになったとのことだ。

因みに、/w/の音が唐突に出てきたように感じると思うが、これは半子音wがoやuの音と近いところにあるためである。日本語の歴史でも、「を」は元々/wo/(「ウォ」)と発音されていたし、なんなら「お」でさえも/wo/と発音されていた時代さえあったが、現代では共に/o/(「オ」)と発音されている。言語を問わず、wはoと近いところにある音なのである。