日本語

goの過去形がwentなのは「4個」を「よんこ」と読むのと同じ(中学生の英語なぜなぜシリーズ その4)

中学英語で納得いかないものランキングの上位に入ってくるのがいわゆる「不規則変化」だと思いますが、その中でもgoの時制変化go - went - goneはその筆頭に入るでしょう。何しろ"go"や"gone"と似ても似つかない"went"が登場するからです。 なぜ"go"の過去形…

hの話 まとめ記事

「hの話」は2023年7月時点で9つの記事があります。この記事ではこれら9つの記事を整理してみます*1。 hの話(その1:黙字のh) 発音されない"h"についての簡単な紹介 ヨーロッパ諸語に限らず、日本語でも類似の現象が起きていることの紹介 lar-lan-lin.haten…

忌避の表記

名前というのは大切であり、洋の東西を問わず相手の名前を直接呼ぶことは不敬とみなされる文化がある。 例えば日本では、天皇皇后(や上皇上皇后)を「陛下」、皇太子皇太子妃をはじめとするそのほかの皇族を「殿下」と呼ぶが、これはそれぞれ相手を直接呼ぶ…

「ないときはない」と「ないときがない」の違い

ふと会話の中で「ないときない」というフレーズが出てきた。 「ないときない」という表現は「ないとき●ない」の●の部分にある助詞が省略された表現であると理解したが、この省略された助詞が"は"なのか"が"なのかで意味が変わるな、と考えた。 ないときはな…

「冶具」が「じぐ」なら「剣具」も「じぐ」なり

※本記事は特定の企業を揶揄する意図はありません。ご了承ください。 「治具」という用語がある。主に工場などの製造現場で使われる言葉で、作業に用いられる道具という意味である。 「治具」は英語の“jig”(ジグ、意味は同じ)を日本語化した言葉といわれて…

ひらがな・カタカナ裏話(その6:「お」の点は補空の点か?)

前回の記事はこちら: lar-lan-lin.hatenablog.com ひらがなの「お」は漢字の「於」の草書から生まれたとされています。 「於」の左側の「方」が「お」の1画から2画の途中までに変わるのは納得できるにしても、 「於」の右側の4画が「お」の2画後半と終画の…

「茶漬る」の文献「遊子方言」「傾城買四十八手」から「茶漬る」を探す

今、twitter上で「茶漬る」という動詞が話題になっています。 「告る」「ディスる」のような名詞+「る」という造語法は江戸時代からあったようです。 辞書編集者の神永暁さんの「さらに悩ましい国語辞典」(時事通信社)によると、 「お茶漬けを食べる」と…

ひらがな・カタカナ裏話(その5:字源の漢字の裏を取る(後編))

ラスト4字を紹介します。前回:ひらがな・カタカナ裏話(その4:字源の漢字の裏を取る(中編)) へ(部) 「へ」が「部」から生まれたという話は、以前ご紹介したとおりです。参考:ひらがな・カタカナ裏話(その2:「へ」が「部」から出来たって本当?)日…

ひらがな・カタカナ裏話(その4:字源の漢字の裏を取る(中編))

前回の続きです。前回:ひらがな・カタカナ裏話(その3:字源の漢字の裏を取る(前編)) し(之) Meshi / kzys 「し」の書体として上に「丶」が打たれるものがあるので、「之」が由来というのにはそんなに違和感はないのですが、 それにしても「Z」のよう…

ひらがな・カタカナ裏話(その3:字源の漢字の裏を取る(前編))

ひらがなの由来の中には、「それホント?」と言いたくなるようなものがあります。 過去に記事にした「み」や「へ」は、そんな思いから記事にしたものです。 この2つは、元の字とされる「美」や「部」と大きく形が異なるため、その成り立ちに疑問が湧いた字で…

hの話(その5:日本語史におけるh)

前回:hの話(その4:hの役割が変わった時) 現代日本語には極当たり前に存在する[h]の音であるが、 日本語の歴史においては、新しく日本語に加わった音である。 しかし一方で、「ハ行」に相当する文字自体は、日本語が文字で書かれ始めた頃から存在している…

ひらがな・カタカナ裏話(その2:「へ」が「部」から出来たって本当?)

ひらがな・カタカナ裏話の第2弾、漸くです。前回:ひらがな・カタカナ裏話(その1:「み」のはらいはどこから来たの?)今回のテーマは「へ」です。 前回の「み」よりも、成り立ちには納得が行かないでしょう。 どうやって11画の「部」が、たった1画の「へ」…

なぜoneと綴って/wʌ́n/と発音するのか?(中学生の英語なぜなぜシリーズ その1)

なぜoneと綴って/wʌ́n/と発音するのか?英語を学習すると、いや、英語学習を始める前から、ありふれた英単語として接しているため、改めてこのことを疑問に思う人はそんなにいないかもしれない。 しかし、英語学習を進めていき、単語の綴りと発音の関係がお…

「好きくない」という表現に対する考察―主体性放棄による他責的表現―

若者の崩れた日本語のひとつとして、「好きくない」という言葉が使用されています。 この言葉は「好きではない」「好きじゃない」と同じ意味として用いられていると考えられており、 日本語文法的に正しくない表現であると見做されています。本記事では、こ…

ひらがな・カタカナ裏話(その1:「み」のはらいはどこから来たの?)

A typical soba noodle shop よくあるそば屋 / Urawa Zero我々日本人が日常的に使っている「ひらがな」「カタカナ」は、いずれも漢字から生まれたものだということは、皆さんもご存知だと思う。 「あ」は「安」を、「い」は「以」を、「う」は「宇」を、それ…

hの話(その2:音を失くしたhの役目)

前回:hの話(その1:黙字のh) h存亡の危機 h- / TooFarNorth 前回紹介したとおり、フランス語やイタリア語、スペイン語ではhの音が言語自体から原則的に消えてしまったため、「表音文字」としての"h"の存在意義が無くなってしまった。こうなってしまった場…

hの話(その1:黙字のh)

HERMES Ginza_01 / scarletgreen タイトルは狙ったわけではないのですが、一応小文字にしたので誤解は少ないかと思います。 文字としての"H"/"h"並びに、音としての/h/及び[h]のお話です。 発音されないh 文字としてのhと言えば、語頭のhが最も話題に挙がり…

日本語の「映像的」という特性が日本語話者に与える影響(熊谷高幸: 日本語は映像的である, 新曜社)

熊谷高幸: 日本語は映像的である, 新曜社8月中頃にたまたま手に取った本でしたが、内容的に大当たりで、割りと早めに読み終えることが出来ました。と言っても1ヶ月かけてしまいましたが。この本は、心理学者である著者が長年自閉症患者のコミュニケーション…