ひらがな・カタカナ裏話(その6:「お」の点は補空の点か?)

前回の記事はこちら:
lar-lan-lin.hatenablog.com


ひらがなの「お」は漢字の「於」の草書から生まれたとされています。
「於」の左側の「方」が「お」の1画から2画の途中までに変わるのは納得できるにしても、
「於」の右側の4画が「お」の2画後半と終画の点に変わるというのは、すんなり納得できるものではありません。
特に、「お」の最後の点は、「於」の右上の「人」に相当する筆画なのでしょうか?
それとも、特に「於」からの由来はない、補空の点なのでしょうか?
伏見冲敬『書道大字典』(角川書店、1974)から、推測してみます。

補空の点ではなさそう

結論から言うと、補空の点ではなさそうです。
補空の点である場合は、点がない字体も散見されるのが一般的ですが、
「於」については、1例しか見つけることができませんでした。

一方で、「お」に近い字体で、右上の点が「人」の形に近いものが1例見つけられました。
「お」の終画の点は、「於」の右上の「人」が由来とみてよいと思います。

ところで、「於」の左側の「方」ですが、「木」や「ネ」に変形するものも散見され、
特に「オ」の形に変形するものは多くありました。



他の「方」を扁に持つ漢字「施」でも、「オ」に変形した書体を見つけられたので、
「方」が「オ」に変形するのはよくあることのようです。