発音

hの話 まとめ記事

「hの話」は2023年7月時点で9つの記事があります。この記事ではこれら9つの記事を整理してみます*1。 hの話(その1:黙字のh) 発音されない"h"についての簡単な紹介 ヨーロッパ諸語に限らず、日本語でも類似の現象が起きていることの紹介 lar-lan-lin.haten…

"queue"は何故これで「キュー」と発音するのか

プログラマにはおなじみの単語、「配列」を意味する"queue"ですが、 所見ではとても読めないですよね。僕は学生時代、暫く「クエゥエ」って読んでいました。さて、この"queue"ですが、何でこんな綴りなんでしょうか? フランス語としては問題ない綴り この"q…

"A New English Grammar, Logical and Historical"の"h"に関する記述 まとめ

内容的には「hの話」シリーズなのですが、余りに資料的なので番外編ということで。先日、英語の"gh"について扱ったときに、"strong h"という表記が参考文献にありました。hの話(その8:英語の"gh"とドイツ語の"ch")これについて、著者の田中は同書の中で「…

hの話(その9:"sh"のh)

▲シュークリームの「シュー」とはフランス語で「キャベツ」を意味する"chou"が由来です。ちなみに「クリーム」は英語由来であり、「シュークリーム」という言葉は日本で生まれた和製外来語です。前回:hの話(その8:英語の"gh"とドイツ語の"ch")前々回にて…

hの話(その8:英語の"gh"とドイツ語の"ch")

▲モーツァルトの「アイネクライネナハトムジーク」は、ドイツ語で"Eine kleine Nachtmusik"と綴り、このうち"nacht"とは英語の"night"に相当し「夜」のことである。前回:hの話(その7:英語の"th"(後編))ギリシャ語やラテン語において、時代が進むに連れ…

hの話(その7:英語の"th"(後編))

前回からの続きです。前回:hの話(その6:英語の"th"(前編)) "th"の歴史(中英語) 中英語から、再び"th"の綴りが復権します。 前回と同じ、田中(1970)を引用します。 (中英語(ME)のアルファベット)のうち、ȝ('yogh')とþ('thorn')はそれぞれy…

hの話(その6:英語の"th"(前編))

Vg 22, Häggesled kyrka, Västergötland / Bochum1805前回:hの話(その5:日本語史におけるh)英語の"th"の綴りは、初学者にとっては謎のひとつだと思います。 綴りも謎だし、発音もなじみがない。多くの日本人にとって初めて学ぶ外国語は英語なので、 これ…

hの話(その5:日本語史におけるh)

前回:hの話(その4:hの役割が変わった時) 現代日本語には極当たり前に存在する[h]の音であるが、 日本語の歴史においては、新しく日本語に加わった音である。 しかし一方で、「ハ行」に相当する文字自体は、日本語が文字で書かれ始めた頃から存在している…

韓国語の/z/音について

前回のブログで、韓国語の/z/音について触れてから、ちょっと気になってしまったので色々調べてみました。参考:なぜ日本人はLとRの発音を区別できないのか?(中学生の英語なぜなぜシリーズ その3) 最も参考になったのは、金東昭著(栗田英二訳)の「韓国…

なぜ日本人はLとRの発音を区別できないのか?(中学生の英語なぜなぜシリーズ その3)

なぜ日本人はLとRの発音を区別できないのか?これは単純に、多くの日本人の母語である日本語が、LとRの音を区別しないため、LとRの音を区別することに慣れていないからである。 日本語の場合、(母音が後続するときは)Lで発音してもRで発音しても、共に「ら…

なぜtwoと綴って/tuː/と発音するのか?(中学生の英語なぜなぜシリーズ その2)

なぜtwoと綴って/tuː/と発音するのか?前々からoneについては気になっていて、先程記事にしたのだが、さてとtwoに目を遣ると、one程ではないにしても、これも合点の行かない点があることに気づいたので記事にしました。何が引っかかるか。またしてもwである…

なぜoneと綴って/wʌ́n/と発音するのか?(中学生の英語なぜなぜシリーズ その1)

なぜoneと綴って/wʌ́n/と発音するのか?英語を学習すると、いや、英語学習を始める前から、ありふれた英単語として接しているため、改めてこのことを疑問に思う人はそんなにいないかもしれない。 しかし、英語学習を進めていき、単語の綴りと発音の関係がお…

hの話(その4:hの役割が変わった時)

前回:hの話(その3:hとc)Akropoli / DanielKrieg.deギリシャ語のΗ(イータ)は、はじめ/h/音の役割を担っていたが、次第に/h/の音が使用されなくなったため、代わりに/e/の音を担うことになった、というのは、以前紹介したとおりである。しかし、この現象…

ネパール語で"st-"の綴りが俗に"ist-"と発音されることに関する仮説

ネパールに行ったとき、"st-"と発音されるはずの単語を"ist-"と発音されているのを複数人から何回か聞きました。 具体的には、ネパールの首都カトマンズでも、西のポカラでも、"street"をそのままデーヴァナーガリーで書いた"स्ट्रीट"/sṭrīṭ/が、まるで"इस्ट…

hの話(その3:hとc)

前回:hの話(その2:音を失くしたhの役目)Vegan Double Chocolate Brownie Chunk Ice Cream /Veganbaking.net フランス語、イタリア語、スペイン語で、hと中が良いのはcであろう。 cは現在、多くの言語で様々な音を担当している。英語の中だけでも、 /k/:…

hの話(その2:音を失くしたhの役目)

前回:hの話(その1:黙字のh) h存亡の危機 h- / TooFarNorth 前回紹介したとおり、フランス語やイタリア語、スペイン語ではhの音が言語自体から原則的に消えてしまったため、「表音文字」としての"h"の存在意義が無くなってしまった。こうなってしまった場…

hの話(その1:黙字のh)

HERMES Ginza_01 / scarletgreen タイトルは狙ったわけではないのですが、一応小文字にしたので誤解は少ないかと思います。 文字としての"H"/"h"並びに、音としての/h/及び[h]のお話です。 発音されないh 文字としてのhと言えば、語頭のhが最も話題に挙がり…

2ヶ月後のTOEICのために要点やテクニックをまとめてみた(その21:聞き間違えやすい英単語を実際に聞いてみよう)

今回は、リスニングセッションで、特にPART1や2で聞き間違えやすい英単語を実際に聞いてみようという試みです。ネットの世界は大変便利なもので、英単語の音声データもしっかり転がっていますから、それを使って実際に聞き分けてみましょう。 この記事で使用…

英単語"gauge"について調べてみた―綴りと発音の歴史について―

ちょろっと興味本位で調べていたことが意外にも大きく発展してしまったので、ここの記事にさせて頂きます。 題材は英単語の"gauge"です。この単語、まず皆さんは読めますか?発音記号で書くと/géidʒ/です。そう、「ゲージ」です。日本語でもゲージという言葉…

なぜTOEICリスニングでは、コピー機が話題に上がると選択肢にコーヒーが出てくるのか?(韓国語におけるfのp化)

コーヒー / TomenoNaoki3日連続でTOEIC関連のエントリーなので、ちょっとコーヒーブレイクがてら、発音のお話をしましょう。皆様、是非コーヒーをご用意してこの記事をお読み下さい。と言っても、話題はTOEICからですが。TOEICのリスニング問題で得点が中々…