なぜ日本人はLとRの発音を区別できないのか?(中学生の英語なぜなぜシリーズ その3)
なぜ日本人はLとRの発音を区別できないのか?
これは単純に、多くの日本人の母語である日本語が、LとRの音を区別しないため、LとRの音を区別することに慣れていないからである。
日本語の場合、(母音が後続するときは)Lで発音してもRで発音しても、共に「ら行」の音として扱われる。
日本語の「ら行」の音は、どちらかといえばRの音に近いので、日本語のローマ字表記にはRが用いられるが、決して日本語の「ら」と英語の"ra"は同じ音ではないのだ。
L/Rの他にも、B/VやS/TH(threeの"th")、Z/TH(thatの"th")など、日本語話者には区別が難しい音があるが、これは、日本語が世界の主要言語と比較して、音の種類が少ないのが原因である。
なので、日本語話者が「何でその音が区別できるの?」と思う一方で、相手は「何でその音が区別できないの?」と思うのだ。逆の立場に立つことは、英語しか外国語を知らないと、まずないだろう。せいぜい英語話者は日本語の「つ」を上手く発音できないくらいか。
英語以外に目を向ければ、意外と「日本語にあってその言語にない音」というのはある。
Zの音がない韓国語
韓国語*1にはZの音はなく、近い音としてJの音がある。
かつてはZの音があり、そのためのハングルの文字「ㅿ」もあったのだが、次第に脱落するようになり、やがて文字も消えてしまった。
韓国語で「日本」を「일본(イルボン)」と言うが、昔は「ジルボン」と言っていた*2。英語の"Japan"が中国語の「日本(ジーベン)」を大本の由来としていることを踏まえると、これらの音の類似に気が付くだろう。
(追記)
後日、韓国語の歴史に関する文献調査をしましたところ、
「『日本』のことを『ジルボン』と言っていた」というのは少々言い過ぎな気がいたしました。
「少なくともハングル制定時は『ジルボン』という読みが与えられたが、
実際には時代や地域などにより『シルボン』や『イルボン』と発音されていた可能性もある」
というところで落ち着きたいと思います。
詳細はこちら:韓国語の/z/音について
Hの音がないフランス語
このブログで散々テーマにしているが、南ヨーロッパの言語(フランス語やイタリア語、スペイン語など)はHの音を持たない。遥か昔にHの音は消滅し、綴りにだけ残ることとなった。日本人の「は行」の音は、凡そ「あ行」の音に聞こえるらしい。
詳細はこちら:hの話(その1:黙字のh)
E, Oの音のないアラビア語
何と、アラビア語には母音は(長短をまとめると)A, I, Uの3種類しかない。前後の音との関係や、方言によっては他の母音に聞こえることもあるが、少なくとも文字の上では、この3つしか母音はない。
実は身近なところに、同じ3音しか母音を持たない言語がある。それは、琉球語だ。沖縄の伝統楽器である三線を「さんしん」と呼ぶのは、元々琉球語に「せ」の音がないからである。
SもTもないハワイ語
太平洋の島々の言語は、音の種類が少ないことで有名だ。ハワイ語にはSの音もなければ、Tの音もない。前者はHに、後者はKに吸収されている。日本語の「さと」は「はこ」と区別がつかないことになる。日本語話者からすれば「なんで里と箱が区別できないの?」となるが、同じように日本人は「なんでlightとrightが区別できないの?」と英語話者に思われているのだ。(奇しくもハワイ語を話す人のほとんどは英語も話せるわけで。)
(追記)
ちょっとハワイ語で遊んでみました
lar-lan-lin.hatenablog.com