日本語の「映像的」という特性が日本語話者に与える影響(熊谷高幸: 日本語は映像的である, 新曜社)


熊谷高幸: 日本語は映像的である, 新曜社

8月中頃にたまたま手に取った本でしたが、内容的に大当たりで、割りと早めに読み終えることが出来ました。と言っても1ヶ月かけてしまいましたが。

この本は、心理学者である著者が長年自閉症患者のコミュニケーション障害を研究している中で、日本の自閉症患者とアメリカの自閉症患者とで言語獲得期に見られる困難が異なることに気づき、そこから、日本語という言語の「映像的」という特性を見出したという流れで進んでいく。言語獲得を入り口に、多方面から日本語の特性を明らかにしようとしている。具体的には、

  • 指示語の用法
  • 省略のメカニズム
  • 助詞「は」と「が」の持つ機能
  • 日本語における「時制」の捉え方
  • 日本語と英語の語順
  • 三人称の扱い方

と多彩であり、終章では、既存の言語分類法を依り代に、いくつかの言語を「共同注視重視」と「普遍的視点重視」とを両端とする軸上に分布させることを試みている。

私はそんなに日本語という言語を勉強してはいないが、それでも人並み以上には日本語の特性を知っているつもりである。そのような、少しは日本語という言語に言語学的立場から向き合ったことのある人であれば、この本は大変楽しく読めると思います。

特に、日本語の助詞「は」と「が」の違いは、英語の"the"と"a"の違いと同じだ、と思っているそこのアナタは、その認識では不充分であるということを思い知らされるので、是非々々ご一読下さいませ。