ラテン語の名詞変化はこう覚える(その3:ローマの詩人は男ばかり?)

さて、まずは皆様にお詫びしなければいけないことがあります。
先のエントリー、その1その2で「男性名詞」「中性名詞」「女性名詞」と呼んでいたものは、実はウソです。
本当に申し訳ありません。
正しくは「ほぼ男性名詞」「中性名詞」「ほぼ女性名詞」でした。

…はい、お察しの通り、まぁここまでは予定調和です。
今までの記事では「-usは男性名詞」「-umは中性名詞」「-aは女性名詞」と言い切っておりましたが、言語にはつきもの、これには例外があります。
伝統的に単数主格が-aで終わる名詞を「第一変化名詞」、-usや-umで終わる名詞は「第二変化名詞」と呼びますが、
言い換えると「第一変化名詞=女性名詞」「第二変化名詞=男性・中性名詞」ではないということです。

語尾が-aの男性名詞

では早速、代表的な例外たちを紹介しましょう。まずは、-a型名詞なのに男性名詞のものからです:

  • poēta: 詩人
  • agricola: 農夫
  • nauta: 水夫

これらは-aで終わっていますがすべて男性名詞です。
「詩人が〜」でしたらpoētaですし、「詩人を〜」でしたらpoētam、「詩人たちの〜」でしたらpoētārumです。
見た目女性名詞っぽいですが、男性名詞です。
じゃあ女性の詩人、農夫、水夫はどうするの?とお思いでしょう。
ローマにはスルピキアという女性の詩人がいましたが、ラテン語版のウィキペディアで調べてみたら(http://la.wikipedia.org/wiki/Sulpicia)"poetria"と書いてありました。少なくともpoētaに対してpoētriaという単語があるのでしょう。

イギリスの女性詩人、クリスティーナ・ロセッティ。彼女もまたpoētriaである。

ちなみにincola「住民」という名詞は男性にも女性にもなる名詞(両性名詞)です。
一方で民族全般は男性名詞複数形で書かれるのが一般的です:rōmānī(ローマ人)、Poenī(フェニキア人)。

語尾が-usの女性名詞

  • alvus: 腹
  • pōpulus: ポプラ
  • humus: 地面
  • pīnus: 松

これらは、-usで終わっていますが、女性名詞です。また、Aegyptusは「エジプト」を意味しますが、これも女性名詞です。
ラテン語において国名は女性名詞であり、特に「〜の土地」という意味を持つ"-ia"がついているものが多いですね。

語尾が-usの中性名詞

  • vīrus: 毒、ウイルス
  • pelagus: 海
  • vulgus: 民衆

ウイルスはラテン語です。英語でvirusと書くと発音は/váiərəs/ですが、日本ではラテン語の発音がそのまんま採用されていますね。

DSC02533 / Marcelo Alves


次回は…第一第二変化名詞の別形を押さえますか。形容詞はまぁ別カテゴリーに回しましょうかね。