アルファベット裏話(その1:G「よう似たもの同士」R「何だと新入りが」)


IMG_0559 / bjornmeansbear

アルファベットと言えば、AからZまでの26文字を思い浮かべる。このアルファベットは、昔から26文字だったわけではなく、使用言語に合わせて進化を遂げてきた。文字は言葉と同じ「生き物」なのだ。今回は、進化の過程で生まれた文字の内、いくつかを紹介する。

ラテン文字の祖先たち

現在、我々が一般にアルファベットと呼んでいるものは、「ラテン文字」と呼ばれる文字である。古来ローマで用いられた文字であることが、この呼称の由来である。
日本語のひらがなやカタカナが漢字から生まれたのと同じように、ラテン文字にも元となった文字がある。最も古い、ラテン文字の先祖は原カナン文字であり、そこから以下のようにラテン文字までつながっていく。

GはCにひげを生やしたもの

Gの文字は、実はCから生まれたものである。Cにひげを生やしたのがGだ。
本来、Cの文字の元となった文字は/g/の音しか表さず、/k/の音はKに相当する文字が担っていた。その名残として、フェニキア語から東方ギリシャ語へと別れて進化した古代ギリシャ語では、Γ(ガンマ)とΚ(カッパ)がそれぞれ/g/と/k/の音を担っている。ところが、ラテン語が直接参考にしたエトルリア語には、/g/と/k/の区別がなく、/ke/や/ki/の音を示す時は、"CE"や"CI"のようにCが用いられた。ラテン語ではそれをそのまま採用した為、Cとは別に/g/の音を担当するアルファベットが必要になったのである。こうして、紀元前3世紀にはGが発明され、当時ラテン語に/z/が存在しなかったために不要であったZの位置にGが置かれた。

RはPにひげを生やしたもの

実は、RもPにひげを生やしたものであるが、こちらはPからRが生まれたという経緯ではない。
Pは元々、ギリシャ文字のΠ(パイ)と似た形であった。しかし、次第に右足が内側に曲がり、/r/の音を担当していたΡ(ロー)と形が同じになってしまった。そこで、この文字はひげを生やし、今のRの形になったのである。

玉は王に点を打ったもの


fire agate flickr eyes /
Different Seasons Jewelry

文字に加工をして新しい文字を作るのは珍しいことではなく、世界中でこの現象は見られる。
例えば、漢字の「玉」という字は、「王」という字に点を打ったものである。先程のRとPの関係と同じく、字体が被ったために、遅くとも7世紀の段階で「玉」の方に区別のために点が打たれた。
その名残として、漢字の部首の「王偏」は「玉偏」とも呼ばれ、「王」を部首に持つ漢字の多くは「玉」の意味である「宝石」の種類を示すものが多い。「琥珀(こはく)」「珊瑚(さんご)」「瑠璃(るり)」「玻璃(はり)」「瑪瑙(めのう)」はどれも宝石である。