アルファベット裏話(その2:IVLIET「あぁロミオ、どうしてあなたはロミオなの?」ROMEO「えっと…どちら様で?」)
Gの誕生が紀元前なのに対し、JとUの誕生は大分遅い。ラテン語では元々、Iの文字が[i]と[j]*1を、Vの文字が[u]と[w]を担っていたが、遅くとも6世紀頃には、[j]の音は[ʤ]に、[w]は[v]に変化していたと考えられている。それでもIとVが2つの音を保持し続けていたのは、Cが/g/と/k/の2つの子音を担当していたのに対し、これらの2字が担当しているのは母音と子音の1つずつであり、単語内の配置から母音か子音かの判断がついたからであろう。
JはIをひん曲げたもの
Jの文字が「正式に」生まれたのは中世〜近世ヨーロッパである。「正式に」と言ったのは、それ以前にも字体としてJは存在していたからである。Jは、Iの異体字として、語頭や語末で用いられていた。後のVもそうなのだが、語頭に用いられることが多くなるに連れて、Jが子音の役割を担うようになって来た。こうして、Jが次第にIと発音における役割分担をするようになってきたタイミングで、活版印刷が発明・普及し、完全にJはIと分離することとなった。
しかし、暫くはJはIの弟分の立ち位置を抜けられなかったようだ。1597年に初版が出版された、シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」の表紙は、"Romeo and Iuliet"と綴られており、Jのあるべき場所にIが印刷されている。一方で、小文字のuはしっかりuで印刷されているため、大文字に限った場合かもしれないが。